住宅を売却する流れ|査定から引き渡しまでの手順と費用

住宅の売却は、多くの人にとって人生で数回あるかないかの大きな取引です。売却活動の開始から引き渡しが完了するまでには複数の段階があり、事前に全体の流れを把握しておくことで、無理のない資金計画や住み替えのスケジュールを立てやすくなります。
また、住宅の売却代金がすべて手元に残るわけではなく、不動産会社へ支払う仲介手数料や契約書に貼る印紙税、住宅ローンの残債がある場合の抹消手続き費用など、さまざまな諸費用や税金が発生します。本記事では、査定依頼から最終的な引き渡しまでの手順と、各段階で必要となる費用や税金の目安について整理して解説します。
住宅売却の全体像と引き渡しまでの標準的なスケジュール
住宅を売却する際は、事前準備の着手から最終的な引き渡しまで、おおむね3〜6カ月程度の期間を見込むのが一般的です。販売活動だけでも2〜3カ月ほど要することが多いため、余裕を持った計画が欠かせません。全体の手順は「相場把握と査定」「不動産会社との媒介契約」「購入希望者を募る売却活動」「売買契約の締結」「代金決済と引き渡し」という5つの段階に整理できます。
住み替え時のスケジュールと費用の注意点
買い替えを伴う取引では、現在の住まいを売却してから新居を探す「売り先行」と、新居の購入を優先する「買い先行」の選択が重要です。売り先行は資金計画が立ちやすい反面、新居の引き渡しが間に合わない場合は仮住まいが必要となります。SUUMOの住まいの売却ガイドでも解説されているように、仮住まいを挟むと引越し費用が2回分発生するため注意が必要です。また購入先の中古住宅に手を入れる予定があるなら、あらかじめリフォーム費用の目安を確認し、総予算を管理しておきましょう。
売買契約から引き渡しまでの間には、住宅ローン残債の一括返済手続きや抵当権抹消の準備、登記事項証明書などの各種書類取得を進める必要があります。決済当日のトラブルを防ぐためにも、各手続きの期日を不動産会社と共有し、逆算したスケジュールを設計しましょう。
売出価格を決めるための査定依頼と相場把握の手順
住宅売却を円滑に進める第一歩は、地域の適正相場を把握し、無理のない現実的な売出価格を設定することです。売却相談を始める前に、登記事項証明書や固定資産税評価証明書、建物の間取り図などを手元に揃え、敷地境界や名義、延床面積などの基礎情報を確認しておくと査定が円滑に進みます。
不動産査定には、類似物件の過去の成約事例や公示価格をもとに概算を導く「机上査定(簡易査定)」と、担当者が現地を訪れて建物の損耗状況やリフォーム履歴、日当たり、接道条件を詳細に調べる「訪問査定」の2種類があります。査定を依頼する際は1社に絞らず、複数の不動産会社へ机上査定を依頼して大まかな相場を把握した上で、対応の丁寧な会社へ訪問査定を依頼するのが理想的です。
提示された査定額は会社ごとに異なるため、金額の高さだけで選ばず、価格の根拠をしっかりと比較することが重要です。高すぎる売出価格は売却の長期化を招く恐れがあります。また、三井のリハウスの解説にあるように、売却には仲介手数料や税金といった諸費用が発生するため、手残り金を計算した資金計画が欠かせません。売却後の余剰資金を管理する際は、iDeCoの基礎知識を参考に老後の資産設計と組み合わせて計画を立てるとよいでしょう。
不動産会社と結ぶ媒介契約の選び方と売却活動の進め方
3種類の媒介契約とそれぞれの特徴
査定価格をもとに仲介を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、売却方針に合わせて選びます。
- 一般媒介契約:複数の不動産会社に同時に仲介を依頼でき、自分で見つけた買主と直接契約する自己発見取引も可能です。間口を広げやすい一方、不動産会社側の報告義務や不動産流通機構(レインズ)への物件登録義務はありません。
- 専任媒介契約:契約できる不動産会社は1社に限られますが、自己発見取引は認められます。レインズへの登録義務と定期的な販売状況の報告義務が不動産会社に課されます。
- 専属専任媒介契約:1社のみと契約し、自己発見取引も禁止されています。レインズ登録や報告頻度のルールが最も厳格で、積極的な売却活動が期待できます。
売却活動の開始と内見への備え
媒介契約を結ぶと、不動産ポータルサイトへの掲載やチラシ配布などの販売活動が本格化します。反響を得た後の内見では、室内の第一印象が成約を大きく左右します。水回りや玄関を中心に清掃・整理整頓を行い、汚れが目立つ場合はハウスクリーニングの実施も有効です。見学者から価格や引き渡し時期の相談が入ることもあるため、あらかじめ許容できる交渉ラインを整理しておきましょう。
売買契約の締結と手付金の受領・売主が確認すべき注意点
購入希望者から購入申込書を受け取り、価格や引き渡し時期などの条件が整うと売買契約を締結します。契約当日は宅地建物取引士から買主へ重要事項説明書の読み合わせが行われた後、双方が売買契約書に署名・捺印します。契約成立と同時に、売主は買主から売買価格の5%〜10%程度の手付金を現金や振込で受領するのが実務上の一般的な流れです。
契約時にかかる費用と仲介手数料の支払い
売買契約書を作成する際は印紙税が課税されます。紙の契約書であれば2027年3月31日まで軽減税率が適用されますが、電子契約を利用した場合は印紙税法上の文書に該当しないため非課税です。また、不動産会社への仲介手数料は成功報酬であり、売買契約時に約定額の50%を支払い、残りの50%を引き渡し完了時に支払うケースが多く見られます。
契約不適合責任に関する注意点
売主が特に配慮すべき点として「契約不適合責任」が挙げられます。物件の引き渡し後にシロアリ被害や給排水管の故障など契約内容と合致しない欠陥が見つかった場合、修補請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。トラブルを未然に防ぐため、物件の状況や過去の修繕履歴は正しく告知し、契約書に明記しておくことが不可欠です。
残代金決済と引き渡しの当日の流れ・抵当権抹消手続き
売買契約を締結してから引き渡し日を迎えるまでに、売主は引っ越しを完了させ、家財などの残置物をすべて撤去して室内を空の状態にしておく必要があります。残代金決済と引き渡しは同日に行うのが基本であり、通常は買主が融資を受ける金融機関などに売主、買主、不動産仲介会社、司法書士が集まって手続きを進めます。
当日の具体的なタイムスケジュールと流れ
当日の決済・引き渡し手続きは、おおむね1〜2時間程度で完了します。一般的な進め方は以下の通りです。
- 本人確認と登記書類の確認:司法書士が立ち会い、売主と買主の本人確認および売却・購入の意思確認を行います。あわせて、所有権移転登記や抵当権抹消登記に必要な書類一式に不備がないかを精査します。
- 残代金の受領と着金確認:書類確認に問題がなければ、買主から手付金を差し引いた売買代金の残額が支払われます。振込の場合は、売主自身が口座への着金を確実に確認します。
- ローン一括返済と抵当権抹消手続き:住宅ローン残債がある場合、受領した代金等を用いて金融機関に一括返済を行います。融資元の金融機関から受領した抹消書類をもとに、司法書士が抵当権抹消登記の申請手続きに入ります。
- 公租公課の清算と鍵・書類の引き渡し:固定資産税や都市計画税を起算日に応じて日割り清算し、差額を受け取ります。その後、合鍵を含むすべての鍵や、住宅設備の取扱説明書、保証書などを買主に引き渡します。
- 諸費用の支払い:最後に、仲介会社へ仲介手数料の残金(売買契約時に半額を支払っている場合は残り半額)を支払い、司法書士へ報酬を支払って完了です。
住宅売却にかかる諸費用の内訳と譲渡所得税・確定申告
住宅を売却する際には、成約価格の約3%〜6%の諸費用が発生するのが一般的です。売却代金がすべて手元に残るわけではないため、仲介手数料や各種税金、諸手続きの費用を事前に把握して資金計画を立てましょう。
仲介手数料や登記関連の諸費用
不動産会社に支払う仲介手数料の上限は、成約価格400万円超の場合「売買価格×3.3%+6万6,000円」です。契約時と引き渡し時に半額ずつ支払うのが一般的です。なお、800万円以下の低廉な空家等では事前合意により上限30万円+消費税となる特例もあります。売買契約書に貼付する印紙税(軽減措置あり)のほか、住宅ローン残債がある場合は一括返済手数料や、抵当権抹消登記の費用(登録免許税と司法書士報酬で2万〜3万円程度)が必要です。
譲渡所得税の計算と確定申告の手順
売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得(売却益)が生じた場合、所得税と住民税が課税されます。税率は所有期間5年超の長期譲渡所得で20.315%、5年以下の短期譲渡所得で39.63%です。マイホーム売却では最高3,000万円を控除できる特例を利用できる場合があります。特例利用により納税額がゼロになる場合も含め、売却した翌年の2月16日から3月15日までに管轄の税務署で確定申告を行いましょう。
住宅の売却は、査定から媒介契約、売買契約、そして最終的な残代金決済と引き渡しに至るまで、数多くのステップと専門的な手続きが存在します。各段階でどのような手続きを行い、いつどの程度の費用が必要になるのかを前もって把握しておくことが、後悔のないスムーズな売却を実現するための鍵となります。
なお、契約書にかかる印紙税の軽減措置や各種特例控除、空家取引に関する仲介手数料の規定などは、法改正や税制改正によって要件や期限が変更される場合があります。実際に売却計画を進める際は、不動産会社や税理士などの専門家に相談するとともに、国税庁や国土交通省などの公的機関が発信する最新情報を確認するようにしてください。



